【山田理顕の歩み】

高校卒業後は東北大学の工学部に進学、同大学の大学院まで進むも、「医師になりたい」という思いが沸き起こり、三重大学の医学部に進学しました。

平成九年に三重大学医学部を卒業後、松坂済生会病院、紀南病院に赴任し、その後三重大学に戻り軟骨、腱などの再生実験を行い博士号を取得。

勤務医時代は外傷、脊椎、関節等いろいろな手術を経験しました。その中で特に興味を持ったのは人工膝関節です。膝痛で歩けなかった患者さんが人工膝関節手術後スタスタと歩く姿をみると整形外科医としての充足感を満たされるものでした。

大学院時代アメリカ、シカゴのRUSH医科大学に2年間ほど留学する機会がありました。そこでは再生医療が全盛で主に軟骨、靭帯細胞の実験に携わりました。それにより基礎的な考え方を学ぶことができその後の臨床に大変役立ちました。

医師とは別の分野でのチャレンジとして、東北大学工学部時代の友人(現在は東北大学教授・守谷祐一氏)と共に外科手術で使用するナビゲーションシステムを開発、2017年に特許を取得。

“良いものを作っていくには“トライ&エラーの繰り替えしが大事”そう言いながら常にアンテナを立て新しいアイデアを模索していました

故郷の静岡に戻り島田市民病院等に勤務した後、2018年静岡市葵区籠上に「さくら整形外科」を開院しました。

医院運営ではこれまで培ってきたものを発揮するとともに、地域の皆様と密接に関わり合う外来の診療は、勤務医時代とはまた違ったやりがいのあるものでした。慢性疾患、軽度外傷から手術適応までいろいろな患者様に寄り添う医療をすることを信条としていました。

医院運営だけでなく、更に新しい分野で地域貢献をしていきたいと考え、2022年静岡市では2件目になる障害者の為の通所リハビリ施設を開設しました。

その後新たな取り組みとして“Step up 安東”を開設。 

日々診療していく中で、5年後10年後も元気な身体でいるためには、いくつになっても身体を動かし慣らしておくことが大切だと考えていたからです。

「個々の身体レベルに応じた運動」「痛みを和らげながら運動ができる場所」をコンセプトに、整形外科のリハビリで使用している医療用のマシンを配備するなど、整形外科医らしいアイデアを盛り込みました。

この構想を実現するべく邁進しておりました最中に病が見つかり、闘病するも、オープンを待たずして2023年8月に他界致しました。享年57歳でした。

【人物像】

“少年よ、大志を抱け!”その言葉がよく似合う人でした。

やってみたい事、アイデアが沢山あり「まずはやってみよう!」と実現に向けて果敢に挑戦していく。
その時の目はキラキラ輝いていてまるで少年の様でした。

病さえなければ、との想いは拭えませんが、そんな姿はいつまでも脳裏に焼き付いています。
そしてトレードマークの明るい大きな笑い声が今でも聞こえてきそうな気がします。

文 Step up安東 代表 山田優子


【経歴】

県立清水東高等学校 卒業

東北大学工学部 卒業

東北大学工学部大学院 入学

三重大学医学部 卒業

米国RUSH医科大学 留学(2年間)

三重大学医学部大学院 卒業

【業績・論文】

H20年学位取得 テーマ 腱の再生について  Effect of osteogenic protein-1 on the metabolism of bovine tendon cells, JOR volume 26, Issue 1 January 2008 Pages 42–48

H24年Ultrasonic measurement of bone thickenss for spinal surgery IEEE Trans Ultrason Ferrolectr

Bone thickness    IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control.

Freq Control 2012 Sep;59(9):2077-88

【発明の名称】

外科手術におけるスクリュー刺入孔作成位置をリアルタイムで提供するシステム 特許第6372784号 

〈要約〉脊椎手術の一つであるペディクルスクリュー固定術において,スクリュー刺入位置と,スクリュー刺入方向と,刺入深度を術中に正確に決定し,手術をガイドする方法を提供する. 

〈課題〉これまでの外科手術では,術前に脊椎のCT画像を取得し,CT画像をもとに最適なスクリュー刺入位置を計画するものの,術中には,X線透視装置により脊椎の画像を見ながら,解剖学的位置を参考に,医師の判断によりスクリュー刺入位置および方向を決定していた.術中のX線透視撮影では,被ばく量を極力抑えるため,X線透視撮影は時間的な制約があり,しかもX線透視撮影は2次元画像しか得られないため,術中には,正確なスクリュー刺入位置および方向を得ることが困難であった.

〈解決手段〉本発明では,術前のCT画像と術中のX線画像を同期させ,術前のCT画像上で計画した仮想空間でのスクリュー配置と,リアル空間での患者の脊椎上のスクリュー配置を自動的に検出し一致させ,スクリューの刺入位置と,刺入方向と,刺入深さを手術中にリアルタイムで監視し,術者に情報提供す